桂麻剤 漢方薬解説

麻黄湯の解説

投稿日:2020年2月1日 更新日:

桂枝 甘草 麻黄 杏仁

辛温発表剤(温めて表証を治す)の代表的な処方で、麻黄の鎮咳作用と杏仁の鎮咳去痰作用が合わさり、咳嗽や喘鳴のあるものに奏効し、呼吸困難を改善する作用があります。

麻黄・杏仁・桂枝はすべて温性であることから、体を温めて発汗させることで表の症状(表証)を改善していきます。

麻黄と杏仁は瀉性薬(蓄積している病的産物を除く)であり、特に麻黄は強い発汗薬で、桂枝との相乗効果によって強い発汗作用をもたらすことから、汗の出やすい虚弱体質のタイプには用いてはいけません。葛根湯より構成生薬が少ないので、シャープな効き目が期待できます。

無汗であることが条件であり、自然発汗のある場合には用いません。 もしも用いてしまった場合は、汗が出すぎることにより脱汗となってしまいます。

近年、「インフルエンザには麻黄湯が有効だ」という話が広まりすぎており「インフルエンザ=麻黄湯証」というイメージがついている節がありますが、必ずしもそうでありません。たとえインフルエンザであっても、証によっては桂枝湯で十分な場合もあります。ましてや、「インフルエンザの予防のために麻黄湯を事前に服用する」などはもってのほかです。このような服用をしていると反対に体力が消耗してしまい、体調を崩してしまう原因にもなりますよ!

この時期、インフルエンザというだけで安易に麻黄湯の服用をすすめてくる医療機関には注意しましょう!

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  1. […] この処方は 麻黄湯と桂枝湯を合方したものです。各半湯と名がついていますが、実際には半分ずつ合方したものではなく1/3ずつ合わせたものです。 […]

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  5. […] 麻黄湯をより水滞の多い寒証向きにつくりかえた処方であり、温性を高めるために生姜ではなく乾姜が加えられています。乾姜・細辛は温性が強い生薬でもあるので、寒証向きの処方に […]

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